Market Intelligence Summit 2019 イベントフルレポート(3/3)
明治創業の会社が令和の顧客デジタルシフトをどう支援していくか
加藤 綱貴(Koki Kato) 様
大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 C&Iセンターセンター デジタルマーケティング本部
明治に創業し、フォントの開発や紙幣印刷などを手がけてきた大日本印刷は、平成に入ると事業の強みを生かしてICカードや自動車内装などの領域に乗り出し、現在は高度なセキュリティ技術とデジタル技術を融合させた様々なサービスを展開しています。その一つが顧客企業のデジタルシフト支援です。領域の拡大が市場に受け入れられたことによって、同社の現在の取引社数は3万社を超えており、限られたリソースの中で顧客のニーズに応えるための打ち手としてSimilarwebを導入しました。
▽地方銀行のデジタルシフト支援事例
通帳やキャッシュカードの印刷業務を通して古くから取引のあった銀行も、デジタルシフトに注力している業界の一つです。ここでは、DNPがSimilarwebを活用して地方銀行のデジタルマーケティングを支援した事例をご紹介します。
近年Webでの取引が増加している銀行業界において、地方銀行であるA銀行にとっても、店舗だけでなくWebでの取引環境を整備することは重要な課題でした。そこでまずはオウンドサイトへのトラフィックを増加させる施策を検討しましたが、Webサイト改修やSEOなど、優先順位の選定に決定打がない状況でした。
そこでSimilarwebによって、まずは競合のB銀行のWebサイトのトラフィックを分析し、流入チャネルや月間セッション数、UU滞在時間などの指標で各数値を明らかにしました。その結果、ブックマークやアプリから得られるダイレクト流入が自社サイトに比べて明らかに多いというギャップを発見するとともに、B銀行が無料アプリを多数リリースしていることも確認。アプリからの流入で差がついているという仮説を立て、A銀行においてもアプリの制作を優先させるという判断をすることができました。
この過程においてはB銀行のアプリに関してDAUや滞在時間などのさらに細かい指標を見たり、ダウンロードしている層が他にはどのようなアプリに興味をもっているかを見たりと、自社アプリを開発するうえで参考になる指標もSimilarwebで確認しました。
▽社内理解獲得のためにSimilarwebを活用
2つ目は、全国にスポーツジムを展開するA社の事例です。同社がデジタル広告の展開を検討するにあたり、担当者としてはSNS広告にトライしたいという考えがあったものの、前例のないSNS広告に予算を確保するためには、まず社内で理解を得る必要がありました。
そこでSimilarwebを活用し、同業種のサイトは約7割がスマートフォンからアクセスを得ていること、さらに流出先の約7割がFacebookやInstagramなどのSNS媒体となっていることを可視化。パブリックデータからも、同業種がターゲットとする層とSNSの親和性の高さを確認し、最終的にはSNS広告をジオターゲティングで配信する手法をDNPから提案しました。この事例においては、Similarwebで抽出したファクトに基づくデータを上申資料に盛り込むことによって、「SNS広告を実施する意義」を社内に正確に伝え、理解を得られた点がポイントです。
これらの事例から、Similarwebの次2つの特長を整理することができます。
- 意思決定を支援する
- 根拠に基づいた仮説立案を可能にし、各種提案をする際の説得材料になる
この他にもDNPではデジタル上の行動をトリガーとしてDMを即日発送する施策など、デジタルとアナログを組み合わせた施策に注力しています。デジタルとアナログどちらか一方の施策よりも、組み合わせによる相乗効果を生むことが調査でも確認できており、令和の時代における新たな挑戦の効果に期待が高まっています。
マーケット・インテリジェンスで向上させる顧客のライフタイム・バリュー
Carrie Lazorchak (キャリー・ラゾルチャク)
CRO, Similarweb
顧客のライフタイム・バリューとは、一顧客が生涯にわたって企業にもたらすと想定される利益の指標です。自社に最大価値をもたらす顧客セグメントを特定することができるため、企業にとって非常に重要な指標だといえます。もちろん特定するだけでなく、想定されるライフタイム・バリューを向上させるための取り組みも欠かせません。
ライフタイム・バリュー向上のためには、単に製品を届けるだけでなく、顧客のライフサイクルの全段階において企業が高い価値を提供し、顧客のパートナーとなることが必要です。
顧客ライフサイクルのステージは、大きく次の3つに分けられます:
- 獲得
- アクティベーション
- 顧客定着
この3つのステージはさらに、以下の図のように細分化できます。現実の顧客ライフサイクルは図のように線形で完結するものではなく無限のループを描きますが、ここでは各ステージにおいてマーケット・インテリジェンスがどのように役立つか、BtoBセールスを例にしてお伝えしましょう。
獲得(Reach):
自社のターゲットを探すステップです。同じ市場の競合企業がどのような層をターゲットにしているかを知り、誰がベストなカスタマーかをプロファイリングすることができます。
獲得(Acquire):
適切なターゲットへのプロスペクトを見つけ、時間を割いて話を聞いてもらうための働きかけをします。昨今はコールドコールやEメール、Linkedinなど様々なコミュニケーションチャネルがありますが、チャネルが間違っていては話を聞いてもらえる機会はほとんどないでしょう。Similarwebを活用すると、初めてのアプローチの時点でターゲットの課題に即した具体的な提案をすることが可能です。
アクティベーション(Prove):
先ほどのメールの例では、ターゲットの競合であるB銀行がオーガニック検索から多くのトラフィックを獲得していること、さらにお金に関する教育コンテンツがそれを後押ししていることがSimilarwebで明らかになりました。競合企業の動向が明らかになったことによって、A銀行の取るべき戦略を考える根拠が示されたといえます。
顧客定着(Renew& Expand):
あらゆるビジネスにおいて”最初の90日間”の経験は今後の関係のベースラインになります。Similarwebを活用することによって説得力のある提案を早期に実現し、それを継続できれば、新しいビジネスを提供するためのパートナーとして信頼を勝ち取り、顧客との関係は強固なものになるでしょう。
顧客定着(Advocate):
このようにして真に価値を提供できている顧客は、口コミで企業の価値を広げてくれる存在に成長します。例えばSimilarwebにとってはDHL社がその一つです。Similarwebを活用して新規見込み顧客リストを作成し、営業案件ボリュームを増加させたDHL社は「Similarwebは最も貴重なリード獲得ソースである」というメッセージを、あらゆるシーンで発信してくださっています。
企業におけるこうした取り組みは、一人の担当者や一つの部門で完結するものではありません。顧客のライフサイクルをマッピングして現状を確かめ、各ステージに適切なマーケット・インテリジェンスのデータを見極めて顧客に提供することが必要となるわけですが、
正しいデータを、正しいチームに、正しいタイミングで提供し、意思決定を支援することが重要です。
“Journey 365” 〜「LifeStyle」から見えた「未知」への挑戦〜
濱崎 司 (Tsukasa Hamasaki) 様
ヤマハ株式会社 ブランド戦略本部 マーケティング統括部 UX 戦略部
世界180カ国以上で楽器の製造・販売をはじめとする多様な事業を展開するヤマハにおいて、濱崎氏のチームは、ユーザー行動のデータ分析に基づいた販売戦略の構築をミッションとしています。
▽「顧客軸」のデータで戦略を戦術につなげる
ビジネスの戦略を取り巻く環境はこの10年で大きく変わり、近年、カスタマージャーニーなど「顧客軸」のマーケティング用語がビジネスの源流に位置するようになりました。「どのように購入に至ったか」を含む一連の情報がビジネスの根幹に関わるようになる中、ヤマハではこれまで国毎のマクロデータやアンケート等の独自調査をもとに戦略を立てていましたが、戦略を戦術につなげるにあたり「お客様がどのような体験をして、何に価値を見出しているか」を見るデータがないことに課題を感じていました。こうした背景から、従来のリサーチ手法だけでは定量的に把握することができない「顧客軸の価値」を明らかにするための打ち手として導入されたのがSimilarwebです。
▽顧客の関心事を「量感」で俯瞰する
セッションでは「知らなかったことに気づく方法」の簡易版デモンストレーションを実施しました。テーマは「旅」。次のステップでこれまで見えてこなかった情報を明らかにします。
- フレーズマッチ機能で「旅」を含むキーワードの検索状況を一覧化
- キーワードをドメイン毎に集計し、「どのドメインがなぜ強いのか(どんなキーワードで強いのか)」をツリーマップで可視化(例:「温泉」「夏休み」に強い楽天、「旅館」に強いbooking.com など)
- 関連キーワード機能で、「旅」と一緒に検索されるキーワードを一覧化
- 関連キーワードも先ほどと同様に集計し、ツリーマップで可視化(例:「ホテル」に強いbooking.com 、地名検索に強いWikipediaなど)
この手順で自社と関連の深いキーワードを「量感」とともにグルーピングしていくことによって、そもそも旅立ちたいと思ったきっかけは?というインサイトとそれに対する業界の全体像、自社が置かれている状況を客観的に把握することができるようになります。「分かっている人の”当たり前”」「分かっていなかった人の”そうなんだ”(気づき)」といえるこうした情報を定量データで共有することは、これからの時代にビジネスをドライブする上で非常に重要になるでしょう。
ヤマハでは同様の手順を用いて、同社のWebサイトや楽器販売店のWebサイトをよく見ている人が他にどのような情報サイトを見ているかを分析することによって、お客様の興味対象やタッチポイントを把握しています。
一つのデータを眺めていても分からないことが、組み合わせたり比べたりすることによって分かるようになるSimilarweb。その活用の成果について濱崎氏は過去のインタビューで次のように語っています。「Similarwebは我々に”課題”を見せてくれました。Similarwebがなければその課題に気づくこともなく、適切な事業方針を決める議論すら始まっていなかったと思います」(事例インタビューリンク)
現代ではWeb検索やSNS上の言葉を通じて人々のあらゆる欲求の対象を把握できるようになっています。濱崎氏はSimilarwebによる検索キーワード分析とSNS分析を掛け合わせるという手法で「知らなかった」ことに「気づき」、さらにそれを「今、どうなっているのか」の時系列で把握することによって、本質的かつタイムリーな戦略・戦術の策定を実現しています。
(完)
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