半導体業界 – デジタルデータを基に需要推移をリアルタイムに把握する(前編)
はじめに
半導体市場は、CAGR 5.2%で年々成長を続けており、市場規模は2026年までに7,302億ドルに達すると予想されています。この成長の背景には、需要拡大が注目されるEV(電気自動車)やハイブリッド車の普及があります。従来型の自動車の生産にも、半導体部品が多く使用され、今後、更に半導体市場のシェアを押し上げる可能性があります。同産業に属する各社にとっては、市場全体に対する需要の拡大に合わせて、自社のビジネスを成長させる大きなチャンスと言えます。一方で、日本の半導体業界は、1980年代は50%であった世界シェアが、現在は9%にまで低迷。AI用チップなど、技術革新が求められる分野では、米中企業の競争が激化する中、国内は深刻な技術者不足、厳しい状況が続いています。
かつての技術大国日本にとって、競争力を取り戻すためには、今後ますます成長産業として注目されるロボディックス、自動運転、電気自動車分野において、エッジ機器での躍進が求められます。特に、センサ、パワーサプライ、リレーなどの分野では、日系企業は、業界をリードする立場に今後の活躍が期待されます。米中のAI競争の狭間の中で、既存の部品カテゴリの技術革新を行うとともに、ニッチ戦略を模索し続ける努力が必要です。シミラーウェブは、各企業が、市場の細かな変動や、競合他社と自社の位置付けを常に把握し、データドリブンな意思決定、施策を実行するためのサポートを行っています。
本ブログでは、前編・後編の2回に分けて、シミラーウェブのデジタルデータによって、どのような競合解析が行えるか、分析方法、分析から得られる具体的なインサイト、活用法などをご紹介します。尚、本ブログに使われている数値ですが、デスクトッププラットフォーム上での予測値を基に生成されるデータを基に、分析されたものです。
半導体業界分析ーデジタルデータとの相性は?
シミラーウェブは、現在250カテゴリ(業界)別のトラフィック・エンゲージメントデータを提供しています。今回、半導体業界の業界内のオーディエンスや、主要ウェブサイト、サイトグループ、チャネル分析を行った結果、デジタルデータ上に、市場のニーズの変動を把握するために必要な特性や要素があることが分かりました。
- 半導体部品の大部分は、既製品で流通される
- 各アイテムには純正部品番号があり、その仕様は全世界共通で使用され、売買取引がされる
- 売り手、買い手、部品の開発エンジニアに至るまで、共通言語で商品のプロセスが可能
- 豊富な在庫を保有するディストリビューターサイトは、部品の購買先としてだけでなく、各部品の仕様、商品単価、在庫レベルの確認ができる情報サイトの役割も担い、トラフィックが集中している。そのことから、オーディエンスのデジタル行動の追跡を行うのに最適である
- 半導体・電子部品業界は、非常に急速に変化し、市場変動に敏感に反応する傾向があるため、リアルタイムにデータ測定が可能なシミラーウェブのツールは、従来の一般的なモニタリング方法よりも迅速に対応することが可能
- 半導体業界のエコノミックバイヤー(製品購入の意思決定権を有する人材)は、BOM(Bill Of Material:部品表)を作成するR&D /エンジニアリングであり、購買・部品調達担当者ではないことから、他業種と異なる販売サイクルを軸とするモニタリングが必要
- FFF(Form-Fit-Function) の類似アイテムを識別し、代替の品番をデジタル上で提案できるため、品番をターゲットとするデジタルマーケティングが容易に実施可能。常に、競合に対するベンチマークを行い、施策の投下が求められる。
以下は、デジタル上にて、半導体業界に関係している各種業態をタイプ別に分類しているものです。紺色部分は、半導体メーカー、橙色はメーカー指定のディストリビューター、ターコイズ色は価格・在庫比較のアフィリエイトサイト、また、水色は、指定ディストリビューター以外にで流通されている部品を販売しているサイトの一例です。
デジタル上での分析方法ー主要原則
- エコノミックバイヤーを理解する。ここでは、BOM決定権のある、R&Dエンジニアを前提とする
- 主要原則の前提には、実際コンバージョンは、R&Dエンジニアを対象オーディエンスとし、彼ら行動がコンバージョンに影響を与える。(アイテム購入をコンバージョンとせず、「Product View(プロダクトビュー)」に基づく、シミラーウェブのデータ分析を使用する
- メーカーの.com Webサイトではなく、ディストリビューターをデータマイニングのプラットフォームとして使用
- ブランド/カテゴリー/サブカテゴリーのレベルに落とし込んだ、非常に正確な競合ベンチマーキングを、部品番号まで行うことが可能
- 自動化されたデータベースにて、定点観測を行い、カテゴリ、品番レベルにて、競合のシェア推移、業界の需要の変動を常に把握する
「Mosfet」ーサンプルデータ
以下の円グラフは、半導体・電子部品の大手ディストリビューターサイト、digikey.comへデスクトッププラットフォームからアクセスしているトラフィックの過去12か月のデータから算出しています。また、対象の商品カテゴリは、Mosfetトランジスタになります。具体的なデータの測定方法は、次回の「半導体業界 – デジタルデータを基に需要推移をリアルタイムに把握する(後編)」にてご紹介いたします。
①は、2019年4月~2020年3月、②は2019年7月~2020年6月の12か月移動平均のプロダクトビューシェア率をメーカー別に表示しています。
円グラフ②
各部品番号のシェアと合わせて分析を行うことで、カテゴリ内の各メーカー、品番に対する需要の動きを把握することができます。オレンジ色に塗られた部分は、2020年第一四半期から同年第二四半期へ継続して表示されている品番になります。
以下は、人気品番の推移から得られるインサイトの一部になります:
- 上位20品番の内、8割は、2020年第一四半期、第二四半期時に測定している12か月データに共通して上位にランクイン
- 上位20品番が、測定される部品の約75.35%を占めている
- オンセミコンダクターは、020年第一四半期から第二四半期に、市場シェアを19.8%から32.8%に増加
- オンセミコンダクターには、上位20品番の32%を占める主要品番5件があり、シェア順位2番手のインフィニオンテクノロジーズのシェアの2倍のボリューム
- ロームセミコンダクターは、全体の中ではマーケットシェアは小さいですが、部品番号RZR025P01TLが全測定の品番の内、2番目の位置
まとめ
半導体業界に関する前編ブログでは、デジタルデータが、業界全体の動向を把握する上で、どのように適しているのか?業界の特性、分析を行う上での主要原則、また、直近のMosfetカテゴリを一例に、得られるインサイトをご紹介しました。次の後編では、分析方法に関して、より詳細なフロー、分析から得られるインサイトとどのように活用するべきかなどをご紹介いたします。
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