シード・アーリーステージ投資の意思決定をサポートする「投資関連ソリューション」
仮説検証段階にある企業への投資を推進するベンチャーキャピタル、あるいは新規事業推進に当たって国内外のスタートアップへの投資を検討する企業内の担当者に必要なのは、ターゲットマーケットの規模や成長性、プレーヤーに関する情報であり、そこから得られる投資先企業の事業戦略へのインサイトです。
シミラーウェブの「投資関連ソリューション」は、ターゲットマーケットのプレーヤーの最新の動向をデジタルという視点から光をあてて可視化することで、シード・アーリーステージ投資における投資担当者や新規事業担当者の意思決定をサポートします。
マーケットにおけるプレーヤーのパフォーマンスを評価する
「投資関連ソリューション」を通じてどのような情報が得られるのか、ヘルステック分野でのシード・アーリーステージ投資を検討していると仮定して分析をしてみます。ヘルステックは、HealthcareとTechnologyを組み合わせた造語で、ヘルスケアの分野に人工知能などのテクノロジーを導入することで、病気の予防や健康管理、診療後のアフターケアなどの分野で革新的なサービスが誕生しているマーケットです。予防(生活習慣の改善など)の領域に限って見ても、以下のようなテックベンチャー企業が誕生し、その将来が有望視されています。
- 株式会社 FiNC Technologies
- ダイエットのプロであるトレーナーや栄養士のサポートを受けながらダイエットに取り組むこと ができるアプリ「FiNC」を提供。人工知能トレーナーが美容・健康に関するアドバイスを提供する。
- 株式会社 asken
- 食生活記録・改善アプリ「あすけん」を提供。同名のWebサービスも展開する。食事画像判別AIなどにより食事の写真などに基づいて食生活を記録・栄養計算を行う。管理栄養士のノウハウとAI技術を組み合わせたアドバイスを行う。
- 株式会社ユカシカド
- 尿を送るだけで栄養状態がわかるパーソナル栄養検査アプリ「VitaNote」を提供。検査結果に基づいて、不足している栄養素をサプリで補充するため、オーダーメイドで対応するサービスも提供。
- ウンログ株式会社
- 観便を利用して健康管理・健康増進をはかるアプリ「ウンログ」を提供。便の状態を記録するとスコア化され、同時に食事やサプリメントの摂取状況も記録し、腸活と排便の関連性をチェックできる。排便の状況をスコア化することで、体調をコントロールしながら病気の予防につなげる。
- ライフログテクノロジー株式会社
- 人工知能がパーソナルトレーナーになるアプリ「カロミル」を提供。その日に摂取した栄養素やカロリー、体重、体脂肪などがひと目でわかるほか、体重や体脂肪の予測を人工知能が行ってくれる。
この5社のマーケティングWebサイトを「投資関連ソリューション」のデータセットとして登録すると、各サイトの月間セッション数、セッション数の前月変化率および前年変化率、オーガニック検索からの流入セッション数とその前月変化率などの数字を比較しながら、そのパフォーマンスを評価することができます。
ただし、この5社だけが予防領域のプレーヤーではありません。「投資関連ソリューション」には、類似サイトの候補を自動的に割り出して提示する機能があり、この機能を使ってデータセットを拡張します。またもちろん、プレーヤーのURLを直接入力して、セットすることが可能です。
こうして最終的に予防分野で分析すべきヘルステック企業7社を設定できたところで、調査時点(2020年9月)での最新データをもとに各サイトを比較しながら評価します。7社の中で高いパフォーマンスを示すのが、FiNC Technologiesのfinc.comとaskenのasken.jpの2つであることがわかります。2020年8月の月間セッション数は第3位のfatsecret.jpの5倍以上、セッション数の前年変化率(2018/9 – 2019/8 vs 2019/9 – 2020/8)もそれぞれ30.77%、51.67%と大きな伸びを示しています。オーガニック検索からの訪問数も他を大きく引き離しています。
また今回の分析では、重要な顧客接点であるマーケティングサイトのパフォーマンスだけでなく、各社が提供するアプリの利用状況も同時に見ておく必要があります。「アプリ分析」で各社のアプリのパフォーマンスを評価した結果が次の画面です。インストール普及率、ダウンロード数、およびDAU、MAUの各重要指標で、FiNCとアスケンの両アプリが良好な結果を分け合う形になっています。
もう一つ特徴的な動きがここから見て取れます。ダウンロード数をFiNCとあすけんが競っている状況のなかで、2020年1月に逆転が起きています。あすけんのダウンロード数がFiNCを上回り、その後もアスケンがFiNCを上回るダウンロード数を獲得しています。さらに2019年9月-2020年8月と前年同時期のエンゲージメント指標を比較してみると、FiNCが圧倒的に高いパフォーマンスを示した前年から、アスケンがダウンロード数を伸ばし、他の指標でもFiNCに肉薄していることがわかります。
■2018年9月 – 2019年8月のエンゲージメント指標の推移
■2019年9月 – 2020年8月のエンゲージメント指標の推移
マーケットの成長率は、またターゲットユーザー像は?
このマーケットにおける個々のプレーヤーの動きをながめつつ、全体としての成長性も確認しておきたいところです。そこで、カスタムカテゴリーの機能を使います。この7社のサイトをカスタムカテゴリーとして登録することで、一つのマーケットに見立てて動向を確認することができるのです。昨年度対比で見ると、合計訪問数は9.31%の伸びを示していることが一目瞭然で確認できます。
また利用者層を見ると、登録した各URLのトラフィックシェアのほか、訪問者の年齢分布をサイトごと/全体で確認できます。ここからは、全体として成長はしているものの、その成長は特定の2社が支えていること、利用者層は25歳から34歳が34%、35歳から44歳が27%、18歳から24歳が20%を占めていること、また男女比でいえば64%を女性が占めていることがわかります。
プレーヤーのバリューチェーン分析から差別化要因を探る
ここまで分析を進めてきてわかったことは、ヘルステックの予防領域における、下記のようなマーケット状況です。
- マーケット自体は成長しており、エンドユーザーの認知あるいは支持が広がり始めている
- ただしその成長軌道に乗りつつあるプレーヤーとまた十分なパフォーマンスを出すに至っていないプレーヤーが存在することから、競争が激しいマーケットである
- ユーザーは、25〜34歳をコアとしその前後の世代(18〜24歳および35〜44歳)が80%を占めている。性別では女性が6割強で興味度が高い
ここから更に、各プレーヤーのバリューチェーンを分析することで、シード・アーリーステージ投資における経営戦略上のインサイトを得ることができます。最も多くのトラフィックを獲得し、アプリダウンロード数を順調に伸ばしている株式会社 askenの場合であれば、サイトのコンテンツや事業展開に関する情報から、以下のような価値連鎖がビジネスを支えていることが推測できます。
- マーケティングサイトを通じた集客
- アプリおよびWebサービスを通じた食生活改善プラットフォームの提供
- 同プラットフォームを前提とした広告モデル
- 自治体や法人向けのソリューション提供
- APIの提供による周辺領域事業社とのアライアンス
- 膨大な利用者の管理
- 海外でのビジネスモデルの横展開
また、もう一つの有力プレイヤーであるFiNC Technologiesは、
- ウェルネスに特化したECサイトの運営
- ポイントシステムの導入
- パーソナル診断に基づいたサプリのデリバリーサービス
といった価値提供が差別化要因となっている可能性があります。
シード・アーリーステージ投資では、投資家が投資先の経営陣と一緒に経営戦略を策定するところから参画することが想定されます。その中で適切な判断を下していくための深い考察が、シミラーウェブの「投資家向けソリューション」をはじめとする各機能から得られたデータからマーケットの状況を把握→主要プレーヤーのバリューチェーンを分析するというアプローチをとることによって可能になるのではないでしょうか。
まとめ
ヘルステック分野の中の予防領域におけるプレーヤーの動向を比較分析することで、マーケットの状況に関する以下の点が見えてきました。
- 主要プレーヤーのトラフィック全体としては、昨年度比で成長を実現している
- 各企業のパフォーマンスに差が出ており、非常に競争的な環境である
- ターゲット顧客はシニアではなく、20代から30代の自分の健康に対する意識の高い層である
シミラーウェブから得られた情報を手がかりとしながら、既存のプレーヤーの詳細な戦略分析を行うことで、シード・アーリーステージ投資における意思決定をよりスムーズに進めることができます。
引き続きこちらのブログでは、シミラーウェブを活用して得られたインサイトを提供していきます。
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