キーワードトレンドとトラフィック分析から、旅行・レジャー業界の今後の成長機会を探る
はじめに
新型コロナによる影響を最も受けた旅行・レジャー業界ですが、ゴールデンウイークを目前に控えた3月21日に、すべての地域でまん延防止等重点措置が解除され、今後の旅行やレジャーへの需要回復が期待されます。業界各社は顧客獲得に向けて積極的な施策の実施に転じたいところですが、確かな成果を得るためには、コロナ前の経験値にとらわれず、最新の需要の動向を把握し、消費者の心理や行動を理解することが不可欠です。
そこで本稿では、シミラーウェブの主要機能である業界分析、キーワード分析およびセグメント分析を活用して、消費者が旅行に関してどのような行き先や商品を求めているのか、またどのタイミングで予約検索を行っているのかを明らかにする方法をご紹介します。この方法を通じて得た情報を活用することで、効率的なサイト内プロモーションや有料検索戦略の推進が可能になります。
主要旅行予約サイトにおける検索訪問数と予約件数の相関性
まず最初に、トレンドを見る際に何を指標にすべきかを明確にしておきます。シミラーウェブのコンバージョン分析で主要な旅行予約サイトの訪問数やコンバージョン数の推移を見てみると、検索訪問数と宿泊予約件数に強い相関性が見られます。検索経由の訪問数が増えると宿泊予約件数も伸びる傾向にあり、逆に訪問数が減ると宿泊予約件数は減少します。
過去1年(2021年5月-2022年4月)の主要なサイトのオーガニック検索経由の訪問数とコンバージョン率の推移は、下のようになっています。オーガニック検索からの訪問数と予約件数の相関性は明らかであることから、旅行トレンドを見るに当たっては、オーガニック検索訪問の推移を主要な指標とします。また、オーガニック検索キーワードから消費者心理・行動や需要を読み取ります。
- 主要旅行予約サイトのオーガニック検索訪問数推移
- 主要旅行予約サイトのオーガニック検索訪問からのコンバージョン数推移
コンバージョン分析:主要旅行予約サイトのオーガニック検索訪問数(上)とコンバージョン訪問数(下)
日本、デスクトップ、May. 2021 – Apr. 2022
トレンドキーワードから探る最新旅行者像
旅行業界にトラフィックを送っている検索キーワードを確認するために、シミラーウェブの業界分析を活用します。デフォルトで200以上の業界ごとに主要なサイトが登録されており、各業界の最新のデジタル動向を把握できます。ここでは「旅行と観光」カテゴリーが旅行業界全体をカバーしていますので、このカテゴリーにおける検索キーワードの動向から、最新の消費者行動の特徴を明らかにします。
「旅行と観光」カテゴリーにおける検索キーワードリストを見ると、①サプライヤー名、②各種予約サイト名、③旅行先の地名や祝日などの具体的なニーズを表すキーワードの3つに分類されます。また、サプライヤー名よりも各種予約サイトの方がトラフィックリーダーに上がっているキーワードが散見されることから、消費者が旅行を計画する際には各種予約サイト(OTA)にアクセスし、サプライヤーを比較するユーザーが多いという仮説が立てられます。
- 「旅行と観光」カテゴリーにおけるオーガニック検索キーワード一覧
業界別のキーワード:「旅行と観光」カテゴリー、オーガニック検索キーワード
日本、デスクトップ、Feb. 2022 – Apr. 2022
そこで、主要なOTAサイトを集めてカスタムカテゴリーを作成し、OTAサイトで多くのトラフィックを獲得しているオーガニック検索キーワードを確認し、需要を深掘りします。すると、いくつかの特徴的な傾向が明らかになります。以下に、ひとつずつ説明していきましょう。
- OTAサイトにおけるトレンドキーワード上位
業界別のキーワード:「旅行と観光」カテゴリー、オーガニック検索キーワード
日本、デスクトップ、Feb. 2022 – Apr. 2022
- 祝日を利用して旅行する前向きな気持ち
トレンドキーワード1位が「祝日」でした。そのほかにも「祝日」を含むキーワードが大きく伸びており、祝日を利用して旅行することに対して、気持ちが前向きに変化してきていることがうかがえます。ゴールデンウイーク以降も、祝日における旅行需要が伸びることが予測できます。 - グランピングへの関心は依然高い
トレンドキーワード2位に入ったのが「グランピング」です。グランピングが流行りだしたのは2015年頃からですが、グランピング関連のキーワードリストを作成し過去3年間の検索量推移を確認すると、2020年7-9月に検索トラフィックが急増しています。グランピングへの一般の関心が高まったのがこのタイミングなのかもしれませんが、その後も検索トラフィックは高いレベルを維持し、2022年に入って上昇傾向にあります(下の画面を参照ください)。グランピング施設のオープンも相次いでおり、予約サイトにグランピング施設を入れ、かつプロモーションを実施することは、需要を考慮した上でも有効であると考えられます。 - レンタカーは移動手段としてますます人気
トレンドキーワード4位に入ったのが「レンタカー」で、「レンタカー」を含むキーワードも大きく伸びています。 旅行時の移動手段として、レンタカーの需要は根強いわけですが、昨年対比で検索ボリュームは大きな増加がみられます。レンタカーを訴求したプロモーションは旅行サイトとの相性が良いと思われます。 - ペットと泊まれる宿が人気
コロナ禍でペットの需要が増え、それに伴いペットと泊まれる宿の需要も付随して増加しました。コロナ以前よりも圧倒的に多くのトラフィックが生まれている貴重な旅行関連キーワードです。「ペットと泊まれる宿」関連のキーワードを集めたキーワードリストを作成してトラフィック推移を見ると、波はあるもののコロナ以前と比較して検索ボリュームが非常に増えています。
- グランピング関連のキーワードリストに対するオーガニック検索トラフィック推移(過去3年間)
キーワード分析:グランピング関連のキーワードグループ、オーガニックのトラフィック
日本、デスクトップ、Apr. 2019 – Apr. 2022
時期によって変わるエリアへの興味
検索キーワードで最も多くのボリュームを占めるのは当然エリアであり、人気の北海道や京都は不動の人気を誇っています。注目したいのは、時期によって検索されやすいエリアが異なっているという点です。主要なエリアのキーワード検索量をモニタリングするためのダッシュボードを作成をしておくと、トレンドにすぐ気づくことができるのでお勧めします。
- 北海道の検索トレンド
年始年末と7-9月の夏シーズンにオーガニック検索トラフィックが大きく伸びているのが特徴です。2021年末から今年の4月までの検索トラフィックは、昨年同月比で大きく伸びており、夏シーズンに向けて昨年より大きく検索トラフィックが増えることが見込まれます。検索訪問数と予約数に相関性があることを考えると、現在感染者数も激減しており、これからの旅行先としての需要に期待ができます。
- 北海道関連のキーワードリストに対するオーガニック検索トラフィック推移
キーワード分析:北海道関連のキーワードグループ、オーガニックのトラフィック
日本、デスクトップ、Apr. 2019 – Apr. 2022
- 京都の検索トレンド
京都は本来通年で検索トラフィックが多い目的地ですが、2020年と2021年はトラフィックは激しく上下しており、大きく落ち込む期間が複数回観測できます。それは緊急事態宣言の期間と一致しており、その影響とみていいでしょう。2021年の後半からは順調にトラフィックを伸ばしており、22年の4月のトラフィック量は2019年の水準近くまで戻してきています。トラフィックをサイト別に見てみると、インバウンド向けの京都観光案内サイト、kyoto.travelへのトラフィック量が大きく増えてきているのがわかります。そのほかのサイトを見ても、国内の需要というよりはインバウンドの関心が京都に回復してきている印象があります。コロナの状況が落ち着いてきており、インバウンドの受け入れ条件が緩和されれば、京都エリアへの旅行需要が高まることが予想できるため、インバウンド向けのアクティビティ特典のついた商品開発などを中長期的に行うことを検討してみてもいいかもしれません。
- 京都関連のキーワードリストに対するオーガニック検索トラフィック推移
キーワード分析:京都関連のキーワードグループ、オーガニックのトラフィック
日本、デスクトップ、Apr. 2019 – Apr. 2022
エリア別検索のリードタイムを把握し、施策実施のタイミングを見きわめる ~ 京都を例に ~
最後に、消費者はどのタイミングで予約検索を行っているのかを明らかにして、施策のタイミングを最適化するアプローチをご紹介します。具体的には、セグメント分析を活用して、消費者がいつから特定月の予約を行っているかを明らかにします。例として、楽天トラベルで京都旅行を検討してるユーザーは、いつから特定月の予約検索を行っているかというデータを取り出してみます。
セグメント分析では、分析対象サイトのURLの特徴点を指定することで、特定ページのトラフィック推移を取り出すことができます。楽天トラベルの場合は、京都エリアのホテル検索をした時に、URLに”kyoto”という文字列とチェックイン・チェックアウト日を示す文字列が含まれるため、この特徴点を指定してデータを取得します。
その結果が、下の画面ですが、これを見ると、5ヶ月以上のかなり前のタイミングから、具体的な宿泊予定日を入れて楽天トラベル上で検索しているユーザーが一定数いることがわかります。2021年10月と2021年11月をチェックイン日としたトラフィックが増えてき始めたのは、2021年4月頃からです。また、2021年10月チェックインの検索トラフィックを見たときに、前週比で最も大きくトラフィックが増加しているのは、2021年9月2-8日の週です。
検索訪問数と予約数に相関性があるとすると、最も予約を獲得しやすいタイミングは宿泊月の前月。他者と需要の取り合いになることが予想できるため、早期割引などの1ヶ月以上早いタイミングでの予約を積み上げるための施策を行うことが重要になります。
まとめ
今回は旅行業界に絞って、デジタル上の動きから消費者の心理や行動を明らかにし、そこから具体的な施策につなげていくアプローチをご紹介しました。このアプローチは、旅行業界だけではなく、他の業界、例えばEコマースやCPGメーカーが、競争力を発揮するための可能性を明らかにする場合に活用できるものです。
データを取得するために使用した、シミラーウェブの業界分析、キーワード分析、セグメント分析の各機能について、ご興味をもっていただき、さらに詳しい情報を知りたいという方は、弊社までご連絡ください。実際の画面をご覧いただきながら、ご説明させていただきます。
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