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パンデミックで日本の不動産業界のデジタルはどう動いたか?

パンデミックで日本の不動産業界のデジタルはどう動いたか?

はじめに

コロナ禍の日本では、2020年4月以降、現実的で緩やかなロックダウンが相次ぎ、一般の人々は、家で安全に過ごすか、他の人々と一緒に混雑した通勤をするかで板挟みの状況に直面してきました。ライフスタイルはもちろんビジネスにも大きな影響を及ぼしているこのパンデミックは、不動産業界にどのような影響を与えたのでしょうか。Similarwebを使ってマーケットや競合の動向をベンチマークすることで、生じた変化やマーケットで優位に立つためのポイントを明らかにします。

まず最初に、2019年1月から2021年6月までの不動産業界全体(上位100サイト)のトラフィック推移を見てみます。4月は例年低い水準に落ち込みますが、2020年4月の緊急事態宣言はこの下落をさらに加速させました。しかしわずか1ヶ月でトラフィックは急回復し、その後も成長を続けていることがわかります。

業界全体の月間セッション数を年度別に見ても、堅調な推移が見てとれます。

  • 2019 – 149 million(前年から17%の上昇)
  • 2020 – 203 million(前年から36%の上昇)
  • 2021(最初の6ヶ月) – 243 million (前年から19%の上昇)

この増加を牽引したのはモバイルトラフィックであり、デスクトップはこの3年間非常に安定しており、穏やかな成長にとどまっています。

 

TOP10ランキングと上位3サイトの成長率・特性

月間セッション数上位10サイトのリストがこちらです。10サイトで全体の52%を占めており、モバイルとデスクトップの比率は80対20となっています。各サイトが提供するサービスは、「購入と賃貸」「賃貸のみ」「ニュース」などそれぞれ特色があり、開店閉店のような日本中の開店と閉店についての情報を集めたユニークなサイトも顔を出しています。

トップ3はSUUMO(suumo.jp)、オウチーノ(o-uccino.jp)、ライフルホームズ(homes.co.jp、以後ホームズと表記)で、3サイトの平均月間セッション数は3600万。カテゴリーリーダーであるSUUMOは、前年比26%の成長率を示し、日本における不動産市場の成長を端的に示しています。また、オウチーノは前年同期比で113%と3桁の伸びを示し、ホームズを抜いてNo.2のポジションを獲得しました。

SUUMOとホームズは、トップページ以外で最もアクセスされたのは賃貸カテゴリーですが、オウチーノは不動産取引に関する記事を多数掲載しトラフィックを集めています。

人気コンテンツから読み解く次の動き

SUUMOの2021年上半期の人気ページを見てみると、関東の賃貸情報が1位で、かつトップ10のうち半分を関東の情報ページが占めています(賃貸だけでなく戸建て情報も含む)。また14位には 東京都の賃貸情報がランクインしており、関東賃貸への人気と考え合わせると、学生や社会人が東京に戻ってくる可能性を示唆しています。スマートワーキングは単なる実験であり、これからも続くものではなかったということでしょうか? 今後の人々の動きに注目です。

TOP3サイトにける訪問者のオーバーラップ(重なり)

上位3サイトのトラフィックは業界全体の34%を占めていますが、この3サイトにおける訪問者のオーバーラップ(重なり)を見てみましょう。オウチーノへの訪問者の15%以上が他の2つのサイトも閲覧しているのに対し、SUUMOとホームズの訪問者が他の2つのサイトを閲覧している割合は3%以下でした。ところが、SUUMOとホームズでは訪問者の約半分を共有しており、この2サイトとオウチーノではわずか5%しか訪問者を共有していません。オウチーノは不動産コンテンツで独自性を出すことで、SUUMOとホームズに対して差別化に成功している、訪問者のロイヤルティも高いと推測できます。

訪問者のロイヤルティを示す指標の一つにスティッキネス(粘着性)があります。これは平均ユニークビジター数を平均月間総ビジター数で割ることで算出でき、サイトへの信頼度が高く再訪問の可能性を示す指標となります。不動産業界上位サイトのスティッキネスを算出すると以下の通りとなりました。

 

ワールドワイドのトップ10ウェブサイト(2021年6月):

   ユニークビジター (311.2 million)  / 総訪問数 (1.0 billion) x 100 = 31.1% 

日本のトップ10ウェブサイト(2021年6月):

   ユニークビジター (64 million)  / 総訪問数 (161 million) x 100 = 39.7% 

 

日本のサイトは世界と比べて非常に高く、訪問者の高いロイヤリティを示しています。もしスティッキネスが30%以下になっ場合には、リテンション戦略とウェブデザインを見直す時期にきている可能性が高いので、自社サイトの指標を算出してみることをおすすめします。

デバイスの分布 – モバイルが圧倒的なシェア

日本は、欧米諸国に比べてモバイル端末の利用率が高いことで知られています。不動産業界も例外でなく、モバイル比率は75%以上となっています。2021年6月と2020年の平均を比較すると、デスクトップのトラフィックが7.5%減少し、モバイルからのトラフィックがシェアを拡大し続けていことがわかります。

サイトにユーザーを呼び込むチャネル戦略

ランキング上位サイトの流入チャネル別トラフィックを業界全体と比較して見ることで、集客におけるバランスや強み/弱みを把握できます。オウチーノはダイレクトでは業界平均を大きく下回っていますが、オーガニック検索は業界平均を大きく上回っています。ユーザーをサイトに誘導するためのコンテンツを中心としたマーケティング戦略により、競合他社よりも高い成長を実現しているのです。

一方、SUUMOとホームズはダイレクトとオーガニック検索の各チャネルからバランスよく集客していますが、メール、リファラル、ソーシャル、有料検索、ディスプレイ広告の各チャネルからの集客が弱いようです。ダイレクトとオーガニック検索の2つのチャネルが多くを占める構造のため、その変動がサイト全体のトラフィックを左右することになります。下の図でいうと4月のトラフィック減少や年末のトラフィック増加がそれに当たります。各サイトがこの2つのチャネルに大きく依存し続ける限り、市場の変動に縛られることになります。言い換えれば、例えばEメールマーケティングを強化し、訪問者とのつながりを拡大することができれば、トラフィックの少ない月でもメールプロモーションによって再訪問を促すことが可能になります。

コロナ禍で変わる検索キーワード – 消費者の不安やビジネスの変化を反映

コロナ禍で生じた検索キーワードの変化の事例を具体的に見てみましょう。最も象徴的な変化は、「コロナ」を含む検索キーワードの急拡大です。2020年4月の不動産業界における検索キーワードのうち「コロナ」を含むものを前月比成長率で並べ替えたのが下の画面ですが、「コロナ 家賃」は5000%超、「コロナ 家賃払えない」は758%の伸び率となっています。ここからは個人や事業者の家賃や不動産に対する不安感が見て取れます。

「コロナ」を含まない検索キーワードでは、「住宅確保給付金」が2020年4月から5月にかけて急拡大しました。これはコロナ禍で収入が減った場合に給付を受けられる制度の一つで、個人が現実に直面する、今および近い将来の心配事を反映した検索キーワードです。

 

一見、不動産とは関係ないようにみえる検索キーワードの上昇もありました。「サブスク」「住宅 サブスク」がそれで、コロナ禍でリモートワークが広がりコワーキングのサブスクに注目が集まり、不動産関連サイトへのアクセスが増えたものと考えられます。

ご紹介した検索キーワードの変化はあくまでもほんの一部ですが、こうした変化にスピーディーに対応することが自社サイトへのトラフィックを増やす、あるいはサイトのスティッキネスを強化するポイントであることは間違いありません。

 

使われるサイトになるために – エンゲージメント指標に注目

サイトでのユーザー体験やサイトへのエンゲージメントを測定するために、ベンチマークすべき3つの重要な指標があります。

  • 平均滞在時間:長いほど関心が高く、サイトの利用時間が長いことを意味します。
  • 平均ページビュー数:この数値が多いということは、訪問者がサイト内でより多くのコンテンツを閲覧していることを意味します。
  • 平均直帰率:サイトに入ってきた訪問者が、1ページ見ただけで帰ってしまう割合です。直帰率が低いということは、訪問者にとってコンテンツが適切であることを意味します。

以下は、グローバルおよび日本における不動産業界全体の3つの指標です(2020年7月~2021年6月)。

ワールドワイドのTop100サイト(全トラフィック) 

  • 月間セッション数 – 20億
  • 平均滞在時間 – 6 分23秒 
  • 平均ページビュー数 – 10.6ページ
  • 平均直帰率 – 40.7% 

日本のTop100サイト(全トラフィック) 

  • 月間セッション数 – 2億3,650万
  • 平均滞在時間 – 4 分21秒
  • 月間セッション数 – 4.6ページ
  • 平均直帰率 – 51% 

SUUMO は、直帰率 44%(業界平均より 13% 低い)、特に訪問あたりのページ数では 6.5 ページ、平均滞在時間は 6 分以上と、ユーザーはより積極的にサイトを利用し、サイト内でより多くの時間を費やしており、競合サイトに直帰する可能性は低いと言えます。一方、オウチーノは、消費者の滞在時間は1分未満で、記事を読んで帰ってしまう傾向があり、サイト内の他のセクションを回遊することはありません(2021年6月の直帰率は82%)。

訪問者のプロフィールを理解する

最後に日本の不動産サイトの利用者層を確認しておきます。男性と女性がほぼ均等に分かれており、25~44歳がトラフィック全体の64%を占めています。これに対してワールドワイドのデータを見ると、18-24歳の割合が15%と多く(日本は12%)、また55歳以降の年齢層の割合も日本と比較して高いことがわかります。海外では、より早い段階で不動産に関心を持ち、人生の後半になってもサイトを訪れ続けているということになります。

次のステップ

不動産業界に焦点を当ててコロナによる影響も含めて最新の動向を見てきました。Similarwebは、業界別またサイト別の最新かつ包括的な情報を取得はもちろん、SEOスコアを向上させるための検索キーワード分析まで深く掘り下げることが可能です。

 

ネットユーザーの行動を理解するために

ここでご紹介したのはシミラーウェブのリサーチインテリジェンスで収集できるデータやインサイトのほんの一例です。変化するマーケットや競合の動き、さらにユーザーニーズをすばやく把握することはビジネスの成長に不可欠です。

Similarwebの活用をご検討ください。無料版からのご利用も可能です。

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by Mario Crea

東京を拠点にしているマリオは、ヨーロッパとアジアを横断して生活してきました。エラスムス大学でMBAを取得しており、バスケットボール、ビデオゲーム、レゴを楽しんでいます。

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