ナウキャストのデジタルデータを活用した融資先の選定・予測・モニタリング
金融機関による投資活動は、変動する経済情勢や、市場ニーズの動向に大きく影響されます。近年、海外では、Uber、Airbnb、Lyft、OpenTableに代表されるように、最新テクノロジーを巧みに利用して、既存の市場を切り開いている「デジタル・ディスラプター」企業が、多額の資金調達をバネに、短期間の内に、成果のある躍進を遂げています。融資を受けてから短期間の内にマネタイズフローを構築し、成果をものにする企業もあれば、逆のケースもありますので、融資を行う金融機関は、常に融資先企業の月次決算や監査を日頃から行い経営状態の把握を行う必要があります。
デジタライゼーションが進むことで、各企業の取り巻く環境の変化のスピードは、著しく加速化しています。その変化に順応できない企業は、新旧企業の存続年数を問わず、衰退の道を辿らなければならない厳しい状況です。2020年は、新型コロナウイルスの全世界的な感染拡大に起因する、リーマンショック以来の景気悪化と、先行きが不透明な状況の中、融資先のモニタリングや投資先の査定はこれまで以上にリスクを伴うタスクとなります。
そのような中、資金回収リスク、ビジネス健全性のレベル、将来性の予測、信用度など、基準となる指標データをスピーディに定点観測できる環境の整備が求められます。シミラーウェブのウェブ、アプリのトラフィックデータは、最短で3日前までのデータを分析出来るので、一般的に流通している多くのデジタル指標よりもはるかに高速です。
各企業の財務諸表と合わせて、デジタル経済の市場動向、融資先のパフォーマンス指標を、ナウキャストで把握することが可能な、シミラーウェブのデータを、融資審査前、審査時、融資決定後の監査に使用する選択肢として、ご利用されることをお勧めします。尚、ナウキャストは、気象学に端を発する造語で、ナウ(現在)と、予測する(キャスティング)を組み合わせた言葉になり、数時間先を予測することを意味します。
監査・将来性の予測の代替データの一つとして活用
以下は、シミラーウェブの「投資関連ソリューション」の主な活用方法と目的になります。
- 観察する:デジタル上のヘルススコアと競争力の位置付けの把握
- 検証する:検証・評価をする
- 発見する:デジタル上で変曲するシグナルをいち早く発見する
- 決定付ける:投資仮説への確信・決定
- 明確化させる:数百のデジタル指標による唯一の機会を明らかにさせる
- てこ入れをする:シミラーウェブご利用企業5,000社以上が活用しているインサイト・活用事例をビジネスのてこ入れに役立たせる
シミラーウェブの国別・業界別ヒートマップ
シミラーウェブでは、投資家の皆さまに、以下のサンプルにあるヒートマップを活用して、業界のデジタル上の動向の把握をお勧めしています。同ヒートマップは、現在、週次で無料メール購読が可能です。こちらよりご登録の上、COVID-19の各業界への影響のモニタリングにご活用ください。
日本国内における各業界別の、2019年7月14日から2020年6月14日の期間におけるデスクトップ及びモバイルウェブのトラフィックの前年度比較です。青部分は、前年度比較において、業界のサイト全体の平均を上回る推移を表し、赤は平均を上回る低下の推移を表しています。航空業界、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)、オンライン宿泊予約カテゴリは依然として赤・朱色の状態が続いている状況が明確にデータにも表れています。
ヒートマップは、同じ業界の中でも、トラフィックの停滞を経験しているサイトとそうでないサイトが一目で確認をすることができます。コロナ禍の中、特需をバネに事業拡大を加速させる企業もでています。これまで、対人式に行ってきたサービスを、オンライン化へ置き換える動きも各業界で展開されています。コロナと共存する「ウィズコロナ」、収束後の「ポストコロナ」を見据えて、市場ニーズをデータと基に予測し、的確な意思決定をスピーディーに行うことがデジタル化経済の中で生き残る鍵と言えます。以下は、2020年2月16日から2020年6月14日の期間における日本国内のECサイトの内上位9サイトのヒートマップになります。
活用事例ーレンタルショッピングカート型ASPサイト業界
以下は、シミラーウェブにて販売しているソリューションプランの一つで、投資や融資先の選定、パフォーマンスのモニタリングを行うために必要な機能が搭載されているプラン、「インベスター・ソリューション」の活用事例をご紹介します。
EC化率が、年々上昇している中、オンライン上での商取引は今後も各商材において伸び代があると言われています。その中で、Amazonなど大型マーケットプレイス以外に、全世界的に注目されているのが、個人レベルで気軽にお店を開業できるプラットフォーム提供サービス、Shopifyです。Shopifyの2019年10月のプレスリリースによると、2016年から2018年の間で40か国以上で1億ドルを上回る経済活動を提供。12か国で10億ドルとあり、世界のEコマース市場の2倍を超える成長率と発表しています。
以下の、活用事例では、日本版のShopifyと言われているtheBase.in(BASE株式会社)を含め、国内で、個人でネットショップの開業ができるレンタルショッピングカート型ASPサイトの成長率を表すデータを中心にインサイトをご紹介します。
shop-pro.jp(GMOペパボ株式会社)は、2020年5月、デスクトップ及びモバイルプラットフォームからの月間セッション数のボリュームでは2,100万と、同業他社2位のtheBase.inの1,200万セッションと比較すると、900万セッションの差があり圧倒的なマーケットシェアがあります。
同じデータセットを、前年度比トラフィック上昇率で、並べ替えることで、今度は、同じ業界でも、成長が著しいサイトをマッピングすることができます。
BASE株式会社のデジタルパフォーマンス
首位の、thebase.inは、月間セッション数が前月比180.15%増加、同月前年度比10.08%と、成長度数としては堅調なデータが測定されています。また、サイトのヘルススコアのKPIの一つである、自然流入、オーガニック検索からの流入数の増加率も、広告費を抑えて顧客獲得を行う能力有無の査定に必要な要素です。
thebase.in、stores.jp(ストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社)は、サブドメインにて、各ショップへのトラフィックボリュームも含まれるため、それらトラフィックを含む全体の流入量の伸びの年次比較率をデータに落とし込むことで、各サイトの成長度合いをみることができます。
更に、将来性を予測する上で必要な、時系列での過去のトラフィックの獲得状況、前年同期比のとトレンドラインと合わせて見てみます。以下は、過去3年間のトラフィック推移を四半期ごとに測定した結果です。トレンドラインが1.00に近いと、波なく安定的に成長していると言えます。thebase.in、stores.jpも、0.75以上と高い数値で過去3年、安定した成長率を保持する形にてトラフィックを上昇させている状況が分かります。
年次比較上昇率では、トラフィックの上昇カーブはstores.jpがthebase.inを上回っています。thebase.inは、昨年の10月25日、東証マザーズに新規上場を達成しています。尚、トラフィック獲得には、季節性や有料広告への投資も変動要因になることから、融資先・また、投資を検討している企業のマーケティング施策も、Similarwebを活用して可視化をさせ、効率的に事業が行われているかどうかの査定も必要と言えるでしょう。
2018年第三四半期以降の年次比較の四半期トラフィック上昇率では、thebase.in (青線)、stores.jp(赤線)を比較すると、上昇・下降時期はほぼ同じですが、2018年第四四半期以降、上昇率ではStoresがBaseより常に上回っていることが分かります。
2018年4月以降の、アプリプラットフォーム上のダウンロード数の前年同期比データです。2019年第二四半期以降は、ダウンロード数では続伸傾向にありますが、ウェブトラフィックデータ同様に、2020年第二四半期(特に4月)の伸びが昨年同期の6倍の伸びと特需が反映される結果となっています。
ここで、2020年10月25日東証マザーズに上場のthebase.inの日足終値と日次ウェブセッション数、及び、アプリダウンロード数を比較してみました。日足終値は、Yahoo!ファイナンスBase (4477)より、セッション数及びアプリダウンロード数は、シミラーウェブ日次データになります。その結果、以下の発見が得られました。
- 相対値は0.37~0.44と低、直接的な関係性は見られない
- 過去3-4か月(新型コロナの全国的な感染者蔓延、外出自粛が実施された時期)の「巣ごもり消費」による影響からかセッション数の上昇と、株価の上昇に類似パターンの動きが見られる
- ウェブセッション数の動きに対して、約一か月遅れで、また、アプリのダウンロード数の上昇に対しては約1か月半後に類似する株価の伸びのパターンが見られる(以下、緑線)
株価出典:Yahoo!ファイナンス
thebase.inは、コロナ特需の影響に関連して、2020年3月下旬以降に、ショップの開設が増えており、2020年5月時点で100万ショップ超の利用があると公式発表しています また、同年5月16日から、TVCM放送を実施するなど、大規模なキャンペーンも株価を継続して押し上げる効果に貢献しているものと思われます。シミラーウェブのトラフィックデータによると、ピーク時期の2020年4月後半以降、ウェブ、アプリ共に下降傾向にありますが、株価は引き続き大幅続伸しています。尚、同社の2020年12月期第1四半期(1-3月)の決算によると、売上高は前年同期比47.1%増の11.24億円、営業損益は0.28億円の赤字(前年同期実績は決算説明会資料より)とのことで、上記セッション率が急騰していた時期の売り上げが増収益に貢献していた模様です。但し、トラフィック獲得のための先行投資による営業損益は赤字のため、2020年下半期は、第一四半期に見られた売り上げ増、また、株価を維持が求められます。ウィズコロナ、ピークアウトの第三四半期、第四四半期の今この時期に、費用対効果に合うトラフィック維持・新規トラフィックの獲得への策を慎重に投じる必要があると思われます。
まとめ
シミラーウェブでは、投資家が、データ・ドリブンな意思決定を行えるように、250種類の業界カテゴリのデフォルト設定、また、カスタマイズで独自に業界カテゴリも作成し定点観測ができるプラットフォームを提供しています。世界最大手の投資会社であり、シミラーウェブを長く投資判断をサポートするツールとして活用しているNaspers社に代表されるように、欧米市場では、シミラーウェブの投資関連ソリューションは、デジタル世界を読む指標の一つとして既に広く活用されています。
本ブログでは、デジタル化の進むEC業界の中でも、個人レベルでお店の開業ができる国内ASPサイトのデジタル上での成長を、ウェブトラフィックデータ及びアプリダウンロードの年次比較データにて検証。また、上場をしているthebase.inは株価とトラフィックデータの相関性に関してご紹介をしました。各企業の成長は、様々な要因が複雑に影響されます。上記デジタル上のデータも、市場のニーズの動向、投資先企業のヘルススコアの一つとしてご検討いただければ幸いです。
融資先のパフォーマンス監査、また、これから融資を検討している業界のサンプルデータをご希望の方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。
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