新型ウイルスの拡大で、映画業界に打撃、E-コマースや日本のレンタカー業界にも変化が
新型コロナウイルスに関連して、続々と新しいニュースが報じられています。世界の感染者数が100万人を超える中、米国では報告感染数が世界最多数となり、英国では旅行者の帰国支援に 7,500万ポンドを拠出するなど、各国の混乱は続いています。
ビジネスでも新型ウイルスへの恐怖はますます増大しており、EUと米国の経済が「回復」するには最大2年かかると予測するアナリストもいます。世界中で消費活動が縮小する一方で、シミラーウェブのデータからは、リテール、ヘルスケア、さらには一部のトラベル業界においても、需要増と見られるトラフィックの動きを読み取ることができます。
1) AmazonがGoogle広告予算を90%カット
3月11日、Amazonは、新型コロナウイルス で予測される需要急増とのバランスを取る目的で、Googleの広告予算を大幅に削減しました。翌12日には、アマゾンの有料広告によるトラフィックは前日比で90%減少し、この広告費カットでサイト訪問数は3月25日までに1,120万件の減少となりました。巨大Amazonの広告費大幅カットで、E-コマース業界のその他サイトには、一日あたり100万件にのぼると思われるユーザーが生活必需品を求めて流入する可能性があるということになります。
一方で、ビデオゲームは、引き続きAmazonにとって大きな収入源となっています。広告予算の大幅カットを実施する中、ビデオゲームは新型ウイルスの拡大と外出自粛で需要が急増しており、Amazonもこれに関連したキーワードへの投資は引き続き行っています。3月中、Amazonが所有するTwitch(ゲームに特化したストリーミングプラットフォーム)へのトラフィックは、世界規模で対前年比の15%増加しました。
ちなみに、Amazonの広告予算カットを受けたeBayは、その数日後に「トイレットペーパー」「n95マスク」「手指消毒液」などの急上昇キーワードの有料広告に対する予算を60%増やし、そこから約33万件のアクセスを獲得しています。
2) 「鎮痛剤」のキーワードに関連、「タイレノール」の広告検索量が増加
健康、ヘルスケアの分野では、ブランドがモノを言います。3月14日~17日にかけて、フランスの厚生大臣のツイッター、続いてWHOが「イブプロフェンなど抗炎症剤が新型ウイルス感染を悪化させる可能性」「抗炎症作用の少ないアセトアミノフェンの服用が望ましい」ことを発信しました(現在、WHOは事実上これを修正済み)。これを受けた米国Amazonでは、アセトアミノフェンの代表薬である「タイレノール」の検索量が跳ね上がったことからも、それがよくわかります。
CNNをはじめとするグローバルメディアがこれを報じたことで、 抗炎症剤ではなくアセトアミノフェンを服用すべき、というソーシャル発信が爆発的に拡がり、その結果として、オンラインの検索動向に大きな影響を与えたと考えられます。
これを数字で見てみましょう。2020年2月までは、鎮痛剤に関連したAmazonのサーチでトップのアクセス数を誇っていた「Basic Care(AmazonのPB医薬品)」が、3月9日の週には「タイレノール」のブランドページへの訪問が徐々に上がり始め、3月14日にはトップアクセス数のブランドとして取って変わりました。
3) 日本のレンタカー業界は、直近数ヶ月で訪問数がピーク
旅行や移動が大幅に制限される中、レンタカーやカーシェアは、人との接触を最小限に抑えた移動ができることから「比較的安全」な手段として残された数少ないオプションの一つなのかもしれません。欧米に比べ、都市封鎖や全国的な移動制限が比較的緩やかな日本では、オンラインのトラフィックが示す通り、レンタカーへの需要増が直近でピークに達しています。
下記のグラフの直近3週間を見ると、じゃらん、日本レンタカー、オリックスレンタカー、楽天トラベルなどの主要サイト(レンタカー部門に限定)で一律にトラフィックが大幅に増加しています。4サイト全体のユニークページビュー(UPV)数は2020年1月1日と比較して18%上昇しています。楽天トラベルで2月19日に発生しているUPV数の急増(約2.6万件)は、「ダイヤモンド・プリンセス号」の最初の乗客下船に関連している可能性もあります。クルーズ船を降りた乗客の移動は、まずバスかタクシーで行われましたが、長距離移動が必要な場合にはレンタカーが利用された可能性が考えられます。
さらに3月5日、日本政府は、中国・韓国からの入国者全員について2週間停留を行うことを決定しました。その直後、3月5日から7日の間に、じゃらんと楽天トラベルでは、UPVがそれぞれ5.1万件、3.5万件上昇しています。そうした危機感の高まりを受けて、移動中のリスクが低いレンタカーへのアクセスが高まったとも考えられます。
リスクを抑えた移動という観点から、レンタカーは新型ウイルス拡大と共に需要が高まっています。反面では、事態が収束し、消費者が他の移動手段に戻ると同時に、トラフィックは元に戻ることも容易に予測できます。
5) トレントサイトへのトラフィックは3月に30%増 – 拡がる海賊版
AMCシアター、Regalなど、米主要映画館チェーンは、感染拡大を受けて全国的に映画館を一時閉鎖しています。その結果、映画配給会社各社は、映画のリリースを「direct-to-video(映画館での公開をせず、家庭視聴用フォーマットで直接公開すること)」に切り替えています。『The Hunt』、『ザ・ウェイ・バック』、『インビジブル・マン』などは映画館での封切りを実施したものの、今や海賊版サイトでの違法公開が多く確認されています。ソーシャル・ディスタンシングが続く中、消費者の興味がこうしたコンテンツに向くのは当然かもしれませんが、映画業界にとっては大きな打撃です。
トレントサイトの上位10サイトのトラフィックを見ると、うち7サイトで最も訪問されているページは、まだ映画館で公開中の映画でした。ディズニーは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の販売開始を3月14日に前倒ししましたが、『アナと雪の女王2』のようにディズニープラスでの即時公開にはなっていません。そうした中、『スター・ウォーズ』は、rarbg.to のようなファイル共有サイト上で急速かつ大規模に拡散されているようです。
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